理事長・校長あいさつ

理事長 澤谷常清
三愛学舎は、岩手県内唯一の私立の特別支援学校で知的障がいを主とする高等部単置の学校です。また1996年に専攻科を新設し、本科3年と専攻科2年を合わせた5年間を学びの期間として、青春を謳歌すると共に、人格形成の学びと就労の学びを両立させます。
専攻科を設置している特別支援学校は、国公立1校、私立9校のみで全国的にも珍しい存在です。
三愛学舎は、キリスト教主義を基本理念としています。
「神を愛し、人を愛し、土を愛する」の三愛精神のもとに、教職員と生徒が共に学び合い、共生社会の一員となることをめざします。
「物の豊かな生活を追い求め、自分の欲求を満足させようと願い続ける現代の世相は、人間相互の信頼関係を損ね、自然環境をも次々に破壊するなど、将来に暗いもの予感させます。このことは人間があまりにも見えるものばかりに眼を奪われ、見えないものの中にある大切なものを忘れているからだと思います(「三愛学舎教育のねらい」より)」。
三愛学舎は、目に見えないものを「神の愛」と捉え、生徒、教師が共に学び合い、人と人とのつながりの礎を築き、学ぶこと、働くこと、生活することを一体として捉えます。
三愛学舎は、発達期から成人期までの心身が大きく揺れ動く成長期を担う青年期教育の場です。
青年期は、人生で最も活き活きとする時、その中で「自分は何者であるか?」「何をなすべきか?」を確かめる時期です。
本科では、毎日の昼食を自分たちで作って食べます。「食」づくりを通して生活に根付いた「ことば・文字・数」を学びます。
専攻科では、職業の学習を通して人格形成の学びに重点を置きます。
「自分くずし」から「自分づくり」の学び。
「子ども」から「大人」への移行の学び。
「学校」から「社会」への移行の学び等です。
学ぶ意欲、働く意欲、生活する意欲を身につける場が専攻科です。
教職員は、生徒と共に学ぶ三愛精神を大事にし、生徒の向学心とご家族・隣人からの期待に応えるために、日々の「学び」に取り組んでいます。
学校経営を担う理事会、評議員会は、教職員の夢・目標を実現できるように、真摯に協議を重ね、努力しています。
45 年を超えた三愛学舎の歴史は、カナンの園の一員として、全国の後援者や保護者、卒業生、そして関係諸機関等のご理解ご支援を受けて歩んできました。誠にありがとうございます。
これからも皆様のご期待にお応えするために、教職員と理事会、評議員会が協力し合い、夫々に与えられた役割を果たしてまいります。
今後とも三愛学舎を覚え、ご支援・ご協力をお願い申し上げます。
2023年4月
学校法人 カナン学園 三愛学舎
理事長 兼 校長 澤谷常清
三愛精神
三愛精神の源流は、フォルケホイスコーレ(国民高等学校)を創設し、近代デンマークの礎を築いたN.F.S.グルントヴィ(1783-1872)に見ることができます。
グルントヴィは、デンマークが絶対王制から立憲君主制に転換し、ブルジョアジーが台頭した時代、国民の大多数を占める農民たちの声が正しく政治に反映されない限り民主主義は形骸化するとし、そのために民衆の教育こそ最大の課題だと考えました。民衆が高いレベルの教育を受け、官僚や知識人と対等にものを言い、あらゆる権威に立ち向かう自主独立の精神を身につけるために新しい学校の創設を提唱しました。これがフォルケホイスコーレです。
フォルケホイスコーレは17.5歳以上であれば誰でも入学でき、試験がなく、資格も与えられません。教師と学生が寝食を共にし、親密に「生きた言葉」で語り合う中で、それぞれの生が生き生きとしたものとなり、生への期待を喚起することになります。
ただし、グルントヴィ自身は三愛精神を言及していませんでした。三愛精神を直接述べたのは、グルントヴィの良き後継者のクリステン・コル(1816-1870)でした。コルは「この学校で何を教えるのか」と問われた時、「全力で、神を愛し、隣人を愛し、祖国を愛することを教えたい」と答えました。そしてその後、三愛精神が日本に紹介され、「祖国」が「土」に言い換えられ、今日の三愛精神となりました。
出典 三愛塾運動と農村伝道―樋浦誠の理念と実践― (渡辺 兵衛)
神を愛し、人を愛し、土を愛す―今に生きるデンマルク国の話― (小山 哲司)
本校の使命
本校は、知的障がい等のある生徒が学ぶ高等部単置の特別支援学校として、本科3年と専攻科2年の青年期教育を行います。
- すべての人が互いに尊重しつつ、助け合って生きていく社会の実現をめざします。
- キリスト教精神に基づいて、知的障がい等の教育上特別の支援を必要とする生徒を主な対象として教育を行い、障がいによる学習並びに生活上の困難を克服し、社会の中で自立的に生活する人材を育成します。
教育目標
- 生徒、教職員が共に生き方を考え、学び合う。
- 生徒の個性、個々のニーズに応じた教育を行う。
- 青年期の調和的な成長を図る。

教育のねらい
三愛精神を通して、生徒、教職員が共に、生き方を考え、学び合い、実践することをねらいとし、次の3つのことを教育活動の柱とします。
<神を愛する>教育を ―神の愛を知る―
三愛学舎の教育における中心は、神の愛によって生かされていることを知ることと考えます。
生徒、教職員が共に聖書に学び、祈りを大切にします。人と人とのつながりの礎を築き、同時に、労働、生活など全ての活動の源を、しっかりと学び合うことを教育のねらいとします。
<人を愛する>教育を ―人間の真のつながりを追求する―
三愛学舎は、生徒、教職員が共に、人間の真のつながりを大切にする場であると考えます。
開かれた関係、生かし合う関係をもとに、人間が共に生き、生かし合える社会のあり方を考え、探し求めていくことを教育のねらいとします。
<土を愛する>教育を ―生きがい、喜びのある労働・生活を学ぶ―
“土”は衣・食・住など人間が生きていく上で必要なもの全ての拠所であると考えます。
三愛学舎では、やがて自らの手で労働し、生活していくことへ向けて、生きがいと喜びのある労働・生活のあり方を学ぶことを教育のねらいとします。
沿革
1974年 | 社会福祉法人カナンの園 奥中山学園内に私設高等部設置 |
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1976年 | 養護学校設立準備委員会設置 |
1978年 | 学校法人カナン学園認可 岩手町御堂の仮校舎にて三愛学舎養護学校開校 |
1980年 | 現在地に新校舎落成移転 |
1996年 | 専攻科設置 |
2004年 | 本科、専攻科定員増(各学年10名から15名に) |
2008年 | 校名を「三愛学舎」に変更 |
2011年 | 芸術・造形棟 新築 |
2017年 | 三愛学舎創立40周年記念礼拝・感謝会開催 |
2022年 | 新校舎落成 |